健康体力研究所

トレーニングガイド

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トップアスリートによるビギナーのためのベーシックトレーニング Vol.34

前回はパワーリフティングの2種のルールについて解説しました。パワーリフティングのノーギアとフルギアの重量の違いは、かなり大きいですが、選手の技術や体力、筋力だけでなく、競技用品の技術の進化による競技レベル(記録)の向上はパワーリフティングだけでなく、各種競技スポーツに共通にみられるものです。

パワーリフティングブームとトレンド②

装具の進化による記録の向上

オリンピック競技でいえば、2008年の北京オリンピックに向けて開発された高速水着の普及で、北京オリンピックでは競泳だけで20個以上の世界記録が樹立され、2009年のローマでの世界選手権はさらに40個以上世界記録が更新されることとなり、その後、高速水着の着用は禁止となりました。つまりそれは用具の開発は、人類のトレーニングによるパフォーマンス向上の速度を上回る可能性が高く、スポーツとしての本質から外れてしまうと考えたわけです。ですから、カラダを覆う面積、素材に規制が加わった後は、しばらく世界記録は更新されないだろうというのが、一般的な予想でした。しかし2012年のロンドンオリンピックでは高速水着で樹立された世界記録を塗り替える選手が次々と生まれました。その要因として、競技場の工夫や発達、ゴーグルやキャップ等のルール内でユニフォーム(装具)が進化したことも考えられますが、何よりトレーニングや選手自身の泳ぎのスキルの向上といったところが大きいのでしょう。

パワーリフティングも同じです。トレーニング方法の工夫、進化に加え、最近は画像解析によるフォームの研究や栄養学的側面から科学的にカラダづくりを行うことまで、日々の鍛錬を効率よく行うことによって、人類の最高値を超えていくのだと考えられます。パワーリフティングのスクワットに使うニーラップスやスーツは、競泳よりもよりダイレクトに記録に響くので、ノーギアの世界記録がフルギアの世界記録を超えるのは高速水着の記録を破るのに要した時間よりかかると予想できますが、競技レベルの向上はいつも予想を超えて起こるものですから、期待しましょう。

ノーギアの記録向上

競技人口が増えれば、それぞれいろいろなトレーニング方法、休息の取りかた、栄養の摂取、サプリメントの開発等、あらゆる側面から研究、開発、情報のシェアが進み、結果として、世界記録が更新されていくわけです。世界レベルではさらに、才能のある選手が、その競技に携わる可能性も高くなり、記録の向上がさらに進みます。実際に、ノーギアが採用されてから、記録ラッシュが起こっており、現在パワーリフティング男子8階級、トータルおよび各種目(スクワット、ベンチプレス、デッドリフト)の記録は全32記録ありますが、その中で今年2016年に樹立されたものが24個あります(2016年10月19日現在公認されたもの)。つまり全体の75%が今年更新されたものなのです。この後、2016年後半には、オセアニア・アジア選手権などの大きな大会もまだ控えているので、さらなる記録樹立が予想されます。

この記録の向上は世界レベルだけに起こるのではないのです。どのようなレベルのアスリート、あるいは他の競技の補助としてパワーリフティングを取り入れているアスリートもこの恩恵を受けることができます。ノーギアは特に、スクワットスーツやベンチシャツといった特殊な“用具”の開発やその使いこなし方によるところが少ないので、ノーギアのトレーニング方法はそのまま他の目的でパワーリフティング種目を実施している方々にも取り入れやすいといえるでしょう。

世界選手権優勝者の記録の編成を階級ごとにみてみると、フルギアの記録が伸び悩んでいるように見えるのに対し、ノーギアの記録の向上は、かなり順調に進んでいます。これは競技人口の増加が要因としてありますが、凄まじい記録の向上は、工夫して努力し続けることの意義を示してくれそうです。どんなレベルの方も、情報の中から自分にあったトレーニングをみつけ、記録、パフォーマンス向上に励んでいただきたいと思います。

 

ベーシックトレーニング著者写真

中井敬子(なかいけいこ)

●東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了/健康運動指導士/
2010年世界パワーリフティング選手権大会女子52kg級 8位

 

 

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