ブックタイトルKentaiNEWSvol218

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概要

KentaiNEWSvol218

石井直方いしい・なおかた●昭和30年東京都生まれ/ボディビル1981・1983年ミスター日本優勝、1982年IFBBミスターアジア優勝/現在東京大学大学院教授(運動生理学、トレーニング科学)、理学博士06昨年の後半に嬉しいニュースが2件ありました。ひとつは、鈴木雅選手のミスターユニバース(世界アマチュアボディビル選手権)80?kg級優勝。日本人として40年ぶりという快挙に心から拍手を贈ります。また、同大会の70?kg級で見事4位に入賞した田代誠選手は、「美しいカラダ、バランスのよいカラダが評価されるようになってきている」とコメントしていますが、これはまことに望ましい方向性だと思います。もうひとつは、大隅良典博士がオートファジーの研究でノーベル生理学・医学賞を受賞したこと。オートファジーはタンパク質分解のしくみのひとつですので、トレーニングの観点ではマイナスのイメージが強いかもしれません。しかし、最近の研究から、オートファジーの活性低下が、加齢に伴う筋萎縮にも関連している可能性が示されています。適切な筋機能の維持・向上にも、タンパク質の合成と分解のバランスが重要のようです。トレーニングとオートファジーの関係については、もう少し研究が進んだ段階でお話しすることにして、今回は、筋力トレーニングとタンパク質合成に関して、最近の私たちのグループの研究からわかってきたことをご紹介しましょう。タンパク質合成のしくみ①転写過程筋線維などの細胞がタンパク質を合成する際には、まずさまざまなタンパク質の設計図が書かれている遺伝子DNAから、必要なタンパク質の設計図に相当する部分を「メッセンジャーRNA」(mRNA)に写し取ることが必要です。これを「転写過程」といいます。設計図をコピーし、工場へ向けての発注書を作る作業に例えることができます。筋力トレーニングを行うと転写過程がどうなるかが、1990年代の初めに注目され、私もテーマのひとつとして研究を行いました。その結果、多くのタンパク質の転写過程を活性化する「原ガン遺伝子」(発ガンに関連した因子)の発現が、筋力トレーニング刺激によって増加することがわかりました。しかし、その後の研究があまり進まず、代わって次に述べる「翻訳過程」が筋力トレーニングに関連した研究の主役になりました。タンパク質合成のしくみ②翻訳過程転写過程で作られたmRNAは細胞質(筋形質)中に移動します。そこで、活性化した「リボソーム」がmRNAに結合し、mRNA上の塩基配列に従ってアミノ酸を順に結合していくことで特定のタンパク質が合成されます。この過程を「翻訳過程」といいます。リボソームは、発注書に従ってタンパク質を合成する「工場」に例えることができます。2000年以降は、筋力トレーニングと翻訳過程に関する研究が進み、リボソームの活性化に関わる「mTORシグナル伝達系」という115「タンパク質合成工場」トレーニングと