ブックタイトルKentaiNEWSvol227

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概要

KentaiNEWSvol227

S そうではないかと思います。『重量挙げバカ一代』に徹して来た証しかと自負しています。M 2000年にはアジア人として初めてIWF世界マスターズ殿堂入りもされていますね。S これは、本当に嬉しかったですね! 世界の協会でも認めて頂いて、長年やってきたことが結実した気がしました。僕が長きに渡り選手としてメダルを獲得できたのは、カラダが小さい軽量級であったからだと思います。重量級の選手だったらメダルは獲得できなかったでしょうね。 一度重量挙げについて話し出すと、止めるのが極めて大変な鈴木幸宏選手。『若者には絶対に敵わない!』と語るときには非常に熱いものが感じられました。「老いを認め」+「それに対峙し対応する」そして「世界大会で君が代を聞くことを子供のように喜ぶ」ということに「元気の源」があるように感じました。ありがとうございました!M ウェイトを固定する部分が回転することは知っていましたが、今見せてもらっているものはプレートを付けてない状態で30秒近く回転してますね!この辺についてもう少し聞かせて下さい。S このシャフトは『UESAKA製』で、1964年の東京オリンピックで使われて以来、最高の精度を世界に誇る代物なんです。今のバーベルはこんなに回りませんよ。このシャフトがしっかりと回転するのが重量挙げにとっての命なんです。今、練習でこのシャフトを使っているのは僕だけかも知れませんね。シャフトがしっかり回転するから重いものが楽に持ち上がり、素早い動作のトレーニング(クイックリフト)が出来るんです。もし回転しなかったら挙がりません。 註 「ウェイトリフティング=重量挙げ」とは、床に置いたバーベルを一気に引き挙げ、その重量を競う競技です。現在、一気に頭上まで引き挙げてから立ち上がる「スナッチ」と、一旦肩まで挙げてから静止し、その後全身の反動を使って頭上へ持ち上げる「クリーン&ジャーク」の二種類の挙げ方があります。「力比べ」と思われることがありますが、微妙なコントロール、瞬発力、感覚、経験などがものをいう「繊細な競技」ともいえます。1920年に男子の重量挙げがオリンピック種目になりましたので、来年の東京オリンピックで100周年になります。その昔は、体操競技のひとつとして行なわれていました。女子の重量挙げオリンピック正式種目は2000年からです。リオ五輪に出場した八木かなえ、安藤美樹子の両選手はともに体操競技出身で「跳馬で培った瞬発力とバランス」が基礎となっているというお話です。M 鈴木さんは1988年にマスターズに初出場して優勝し、その後も2018年までに20回優勝されています。長きに渡り競技を続けて、M 窪田登先生とは早稲田で教鞭をとられていた『日本のボディビルの父』といわれた人物ですね。確か1960年のオリンピックに重量挙げ選手として出場もしていましたね。S そうです、その窪田先生です! 僕は大学在学中、国立競技場トレーニングセンターで指導員を勤め、卒業後は文京区教育委員会の嘱託で社会体育指導員をしました。そのあとは国士舘高校の地歴科の教諭を30数年間、勤めました。M 窪田先生が見出していなかったらマスターズでの快挙は生まれていなかったんですね。先程も出ましたが『重量挙げバカ一代』とは何ですか?S 家内の父親が亡くなり群馬まで出掛けて行きましたが、明日が葬式だというときに僕だけは成田から世界大会に出発したんです。その後、教員を退職して郷里の伊豆に戻りました。地元へ戻ってからは、ここで一番近い伊豆市にある日本サイクルセンターでトレーニングしていましたが、そんなある日、 親父が息を引き取りました。葬儀を終えて参列者を見送った後3時間トレーニングしました。今から8年前に、家内が亡くなったときも葬儀を終えて、みんなを帰した後、やはり3時間トレーニングしました。『重量挙げバカ一代』ですよね(笑)。M それだけ『打ち込んでいる』ということなんでしょうね。ところで、今はここでトレーニングされているようですね?S サイクルセンターがトレーニングルームの一般開放を止めてしまったので、5年ほど前から自宅で始めました。ここにあるシャフトは50年前から使っている『UESAKA製のシャフト』なんです! 今ではもう使われていないタイプの素早く着脱が出来るスタイルのカラーです。よく回転しますので見て下さい!どのようなことを感じていますか?S よくね『まだ俺は若いもんには負けない!』っていう人がいますが、スポーツをやったらそんなことはいえなくなりますよ。スポーツをやることによって謙虚になり、身の程を知ります。10代後半から重量挙げの優秀な選手だった人が50歳代ではまだスナッチで110kg、ジャークでは140kg挙げていましたが、70歳代後半になられた今ではスナッチ50kgでジャークでは60kg挙がらないんですね。でもこれが、もしその人が競技を続けていなかったら『今でも100kgくらいは楽に挙がる!』っていっていると思いますよ。しかし、その人は実際に競技を続けているので『身をもって知る』んです。僕は今でも車の運転をしますが、スポーツを通じて自分の今の運動能力の低下を理解していますから、幹線道路への侵入は無理な隙間に入ったりせずに完全に安全な状態になってから入るようにしています。M そうなんですね。『老いを知る』ということなんでしょうか。現在はどのようにトレーニングされていますか?S 今は、週に3日程度、1回に4時間程トレーニングしています。若いときにはウォーミングアップなんてほとんど必要ないと思ったんですが、今はまず指先を温めるところからやらないとならないんですね。手の指を温めて、足の指を温めて、といった感じでウォーミングアップに1時間、クールダウンにも1時間掛かります。70歳を超えた今でもスクワットを行うときは毎回命懸けの高重量で行っています。M 年齢を重ねるについて己を知り、また労りながらやることで、長きに渡り第一線で活躍できるんですね。勉強になります。IWFの世界マスターズとワールドカップ合わせて25個の金メダル保持というのは世界一ですか?元気の源●岡部みつる(文・写真)東京都出身20歳過ぎでボディビルに出合い池袋にあるジムへ通う。昭和の終焉に「本場でトレーニングしたい」と決意し渡米。20年間アメリカで暮らす。在米中はリポーター、そして写真家として活躍、93年にはマスキュラーデベロップメント誌のチーフ・フォトグラファーとして年間契約。96年から始めたビデオ「オリンピアへの道」は選手から「大会自体よりもこのビデオに出たい!」と評判に。2008年に帰国し現在は静岡県内の山中に暮らす。1992年Mr.ロサンゼルス・ライト級優勝。 今までに獲得したメダルは数え切れない!世界と名のつく大会での金メダルだけでも25個を数える!09