Kentai NEWS
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圧倒的な強さには理由がある居心地の悪い環境に身をおくことの大切さポートが私の役割だと思うようになっていたのですが……。ジェンド級ビルダーと肩を並べた日本クラス別70 kg級のステージを見て、私は贔屓目なしに隼人がいくんじゃないかと予想していましたが、結果は4位。たしかに、出場者は皆いい仕上がりでしたし、人の目によるボディビルの審査の壁をブチ破るのは容易ではありません。だとしても、もしも私が彼だったら「いけたと思ったんだけど……」と、ぶーたれていたと思うんです。せた開口一番「厚みが全然足りない」ですよ。当時、大学2年生。二十歳そこそこと思えない素晴らしき思考を前に、四十近かった我が心の器の小ささを目の当たりにして恥を知りました。これが2つめの違和感。間の充電期間を経て、教え子としては最後の年となる2021年にミスター日本となったのです。けていた舞台。出場、そして優勝を果たしたのちに何を見据えるのか、気になって合戸孝二選手や田代誠選手といったレでも、隼人は違った。大会後、顔を合わなんて、出来た漢なのか。それから1年日本選手権は、隼人が長年目標とし続問うてみると「僧帽筋上部が弱いです」と返ってきました。2位だったジュラシック木澤(大祐)選手の僧帽筋上部はたしかに高すぎて言葉もでないほどですから、そうした感想がでるのもわかります。恐竜と立ち並んで比較した経験から、そこを己の弱点として見たのだと思いますが、そもそも日本選手権とは得意部位も普通レベルに落とされる特殊な世界です。ファイナリスト常連であるトップビルダーたちはそれぞれに突出した得意部位を持っているから、自分の弱い部分があぶり出されてしまうのです。隼人自身もそれを知っているからこそ、恐竜の僧帽筋上部から学んだのだと愚かな私は思いました。しかし続けて「上腕二頭筋の短頭も弱いですよね。あと、三頭筋の外側頭。外側広筋も弱いから張り出しも足りないですし……」と結局、ほぼすべての部位を挙げてきたのだと思いますが、そう言っている本人がすべての出場者を上回って優勝しているわけですからね。このとき、ああ前々から隼人に感じていた「アレ?」というなんとなくの違和はコレだったのか、と確信しました。相澤隼人(リスペクトしているからこ           という点。自分に自信を持ちながらも、厳そ、あえての敬称略です)が、圧倒的に強い理由。それは、自己評価力に長けているしい目をもって自分が更に成長するポイントを探し出す能力がとんでもなく高いのです。日本一を獲っても奢ることなく、自分だけの理想に向かってカラダを変えていくことだけに意識を向けている。彼を見ていると、自分の器があまりにも小さすぎて自分のことが嫌になりそうですが(笑)、卒業を迎える今年からは教場を離れて研究とビジネスシーンでの付き合いになっていきますから、肉体のバルク、思考のバルクでは勝てそうにないぶん、資本のバルクで私は彼に勝っていくしかないと考えております(笑)。そしてそれも近く抜かされるでしょう(笑)私はかねてより、大会に出ることでしか作られないカラダがあるとお伝えしています。それは、ここまで隼人のエピソードを読んでもわかる通り、ステージに立つことにより自分にとって足りないところが浮き彫りになるからです。ボディビルに限らず仕事でも、学業でも、同じことが言えるのではないでしょうか。楽勝で物事が進む環境は居心地がよく気持ちが楽ではあるけれど、見方を変えれば停滞です。成長を求めるならば、五分の勝負、あるいは勝ち目がなさそうに思えるくらいの勝負に打って出る必要があるのと思うのです。大人になるにつれ、環境を自分で設定できるようになってくるためなかなか居心地の悪い空間に身をおく機会はありません。自分の力がまだまだ足りないとわかると、自然と力が伸びていく方向に進んでいきます。だから、出場を悩み続けている人は、今年こそ東京オープン(ノービス)にエントリーしましょう。そして、長年東京オープンに出場し続けている選手は、今年こそは東京クラス別にコマを進めてください。かくいう私は、海外(イスラエル)の大学との共同研究をスタートしました。決して得意ではない英語で、1時間のオンラインミーティング。これがまた……なかなかにしびれる、居心地の悪い時間なのですが、ここに自分の成長スポットがあると隼人の姿を見て私もまた学びましたので、引き続きとてつもない居心地の悪さを堪能し己を成長させていきたいと思います。これを書いている今も、合戸さんから今年の大会はどうするんだと叱咤激励をいただいております(笑)。本年もまた、よろしくお願いいたします。09岡田 隆 (おかだ たかし)1980年愛知県生まれ東京大学大学院総合文化研究科博士後期課程単位取得満期退学/日本体育大学大学院体育科学研究科修了/理学療法士/日本体育協会公認アスレティックトレーナー/現在は日本体育大学准教授/ボディビルダーとしても活躍しており、2016年日本社会人ボディビル選手権で優勝

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