Kentai NEWS
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ないわけではありません。しかし、重量を諦めるトレーニングが果たして増量期における極限のバルクアップトレーニングと言えるでしょうか。も、自分のポテンシャルを世の中に見せられるチャンスも、もうこれが最後(かもしれない)と思ったら、段差をできる限り小さくすることで乗り越えようという気持ちが芽生えました。バーベルカラーなんて、1個あたりせいぜい500g 程度です。そんなことで何が変わる?と笑う人もいるでしょう。でも、2個付ければプラス1kg 。さらに2個増やせば2になる。そこまでいけば、2.5 kg プレートの段差は無くなったも同然ですよね。挙上重量アップのバリアフリー。様の考えで取り組んでいきました。例えば、10回を11回に伸ばす過程では0.5レップ、いや0.1レップからなおざりにせず、きちんと刻んでいくようにしていったのです。トレーニングを続けるほどに落ち入りがちなゼロヒャク思考はキレイさっぱり捨てて、ほんのわずかな伸びだとしても、確かな自身の成長と捉えていくのです。己の筋肉を極限までデカくすること重量だけでなく、レップ数に対しても同少しずつとはいえ、右肩上がり的に成長を追い求め続けていくと、途中でカラダにガタがきます。怪我まではいかずとも、関節や腱に痛みや違和感をどうしても覚えるようになるものです。これに関してはいろいろな考えがあると思います。「怪我なんて当たり前」「怪我をしてからが一人前」といった声も少なくありませんが、私としてはボディビル界のとんち話のようなものかな、と思っています。「食べて(動いて)絞れ」のような、途中の論理を言わないあれです。実際のところ怪我をしたら弱くなりますからね。論理を飛ばさずに書くならば「怪我をしてもおかしくないくらい重量のレベルで追い込まないと、結果は残せない」ということなのでしょう。ここで厄介なのは、どこまでやったら怪我をするかなんて誰にもわからない、という点です。怪我をしてみて初めて限界値に気がつくわけですが、それでは遅すぎます。でも、怪我を恐れて追い込まずに続けていても、永遠に弱いまま……。そこで私が取り入れたのが、予防的強度コントロールです。これは、不調を感じる前に休んでしまう、というものです。仕事が混み合ってきてトレーニング時間が取りにくくなると、本来なら焦るし夜中でもトレーニングしていたところを、普通に休んでしまいます。罪悪感や無力感は最初芽生えますが、予防的強度コントロールと捉えて心の平静を得る。結果、痛めやすい関節や腱は休まるし、睡眠時間は確保されるし、翌日のトレーニングの質は高まるし、良いこと尽くめです。また、五味原領選手におすすめされた、1ヶ月につき1週間、強制的に強度を落としてトレーニングをするサイクルを組みました。言ってみれば、ピリオダイゼーションのひとつです。コンディションを整えながら、成長は止めない。過去、増量期のバルクアップトレーニングで攻めまくった代償として怪我を抱えることになったビルダーの皆さん、ぜひ参考にしてみてください。私自身、この思考を採用した今(ラスト)シーズンの増量期はかなり調子良く過ごすことができました。増量期を設けてしっかりとバルクアップしたおかげで、減量期に入っても「食べて絞れる」を実践することができているため、除脂肪がスルスル進んでいっています。ギリギリまで上げた筋持久力が体脂肪を落とすフェーズで強烈に力を発揮することを実感しています。唯一しんどいことと言えば、4年ぶりのタンニングでしょうか。元が色白の私は、早々に肌が死にました。というのは半分冗談だとしても、増量        レーニングをして体脂肪を溜め込んだだ期を調子良く過ごせたおかげでいい減量期が過ごせているのは本当です。ぬるいトけのカラダの減量には辛さしかありませんが、本気の増量期を過ごすと、そこですでにボディビル競技に臨むうえで大変重要になってくるマインドが仕上がっているので、減量期に入ってからは余分なものが削ぎ落とされていくようで「やっとこの時が来たか」、と心地よさすら感じられるのです。増量期はカラダの重さから疲れを感じやすかったり睡眠が浅くなったりしますが、デメリットと言ってもこの2つくらいなもの。それ以外はここまで書いてきたように、メリットばかりだったと感じています。ただ、私は今回をラストと捉えたからこそできた側面は大きいと感じているので、例えばクリーンバルク派であれば「最初で最後の増量期」と掲げて取り組んでみるのはいかがでしょう。あるいは「マインド獲得期」として、追い込みまくるトレーニングにチャレンジするのもいいと思います。きっと、これまで自身が取り組んできたボディビルの向こう側に羽ばたける絶好のチャンスとなるはずです。なら、積極的予防措置を怪我を恐れて弱くなるくらい増量期を設けるメリット、デメリット1980年愛知県生まれ東京大学大学院総合文化研究科博士後期課程単位取得満期退学/日本体育大学大学院体育科学研究科修了/理学療法士/日本体育協会公認アスレティックトレーナー/現在は日本体育大学教授/博士(体育科学)/ボディビルダーとしても活躍しており、2022年日本マスターズ選手権大会40歳以上の部で優勝kg の09岡田  隆 (おかだ  たかし)

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