ブックタイトルKentaiNEWSvol208
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KentaiNEWSvol208
石井直方いしい・なおかた●昭和30年東京都生まれ/ボディビル1981・1983年ミスター日本優勝、1982年IFBBミスターアジア優勝/現在東京大学大学院教授(運動生理学、トレーニング科学)、理学博士前回、筋肉がアナボリック・ステロイドのドーピングを長期間にわたって「記憶」するらしいということをお話ししました。しかし、アナボリック・ステロイドのドーピングは、今回ご紹介する「遺伝子ドーピング」に比べると、はるかに原始的で幼稚なものといえるでしょう。遺伝子を操作する技術がスポーツに悪用される懸念があることは、すでに10年ほど前にこのコラムで述べたと思います。最近の研究の進歩によって、それがさらに現実味を帯びてきました。今回はその例として、驚異的な筋肥大をもたらす「フォリスタチンの遺伝子導入」をご紹介します。このような技術がスポーツに悪用されないための警鐘と捉えていただければ幸いです。体内に遺伝子を導入する技術:遺伝子組み換えと体細胞遺伝子導入細胞に外来の遺伝子を導入する技術には、「遺伝子組み換え」と「体細胞遺伝子導入」があります。導入する遺伝子は、特定のタンパク質の設計図となっている遺伝子に、この遺伝子の発現を活性化する「プロモーター」という遺伝子をつなげたものです。この技術によって、遺伝病などで特定のタンパク質をつくることのできない人を救うことも可能です。遺伝子組み換えでは、受精卵に外来遺伝子を注入し、「組み換え」という現象を利用して、本来ある遺伝子(ゲノム)の中に取り込ませてしまいます。卵が分裂し、成熟した個体になっても、導入遺伝子はすべての細胞に均等に分配されます。しかし、受精卵を扱うために、ヒトに即応用可能な技術ではありません。一方、体細胞遺伝子導入は、成熟した個体の特定の細胞に遺伝子を導入します。通常、上記のように作成した遺伝子を、ウイルスの遺伝子に挿入し、そのウイルスを増殖させて、目的とする組織の細胞に感染させます。ウイルスの遺伝子が多数の細胞の中に入り、挿入した遺伝子のはたらきによって、目的とするタンパク質が多量につくられるという仕組みです。筋肥大に関連した遺伝子前回お話しした通り、トレーニングによる筋肥大には、?筋線維内のタンパク質合成の活性化、?タンパク質分解の抑制、?筋線維の幹細胞である筋サテライト細胞の増殖、の3つの過程が関与しています。これらの3つの過程を調節するタンパク質の遺伝子を筋線維に導入し、過剰に発現させれば、トレーニングしなくても筋肥大が起こることになります。その候補としていくつかの「成長因子」と呼ばれるタンパク質が挙げられます。まず、インスリン様成長因子(IGF-1)。これは、トレーニングによって筋線維から分泌され、筋線107究極の(?)遺伝子ドーピング08