ブックタイトルKentaiNEWSvol209

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概要

KentaiNEWSvol209

石井直方いしい・なおかた●昭和30年東京都生まれ/ボディビル1981・1983年ミスター日本優勝、1982年IFBBミスターアジア優勝/現在東京大学大学院教授(運動生理学、トレーニング科学)、理学博士08現在、健康や長寿のためのダイエット法としてさまざまなものが提唱されています。これらは原理的に「カロリー制限」と「糖質制限」に分けられ、前者はエネルギー摂取量全般を抑えるもの、後者は糖質:脂質:タンパク質の摂取比を変えるものといえます。このうち、カロリー制限について、サルの寿命を延ばす効果があるとする研究と、ないとする研究が相次いで報告されました。世界に衝撃を与えたサルの写真2009年、ウィスコンシン大学の研究グループが科学誌「サイエンス」に公表したサルの写真に世界中が注目しました。彼らは、成長期を過ぎたアカゲザルを、「カロリー制限群」と「対照群」の2群に分け、その後20年にわたって追跡観察しました。対照群では、各個体が自由に摂取する食餌量をもとに毎日のカロリー摂取量を決め、カロリー制限群では自由摂餌量の70%に制限しました。対照群では、27歳で全体の約50%が死亡しましたが、カロリー制限群では、この年齢になっても80%が生存し、平均寿命が延伸することが示されました(ただし、加齢以外の要因による死亡を除く)。さらに衝撃的であったのが、27歳時に撮影された2匹のサルの写真でした。カロリー制限群のサルは毛並みが良く、いかにも若々しいのに対し、対照群のサルは毛が抜け落ち、極度に老け込んで見えるからです。私自身はこの写真を見たとき、「対照群として示されたサルは病気ではないか?」と思いましたが、この論文は、低カロリーダイエットを強く後押しすることになりました。「長寿遺伝子」サーチュインこのサルの実験の背景には、それまでに行われたさまざまな動物実験があります。酵母菌、センチュウ、ゼブラフィッシュ、マウスなどの動物では、餌を減らすことで、寿命が1.5倍程度まで延びることが示されてきました。そして、餌を減らすことによって発現が上昇する遺伝子として、「サーチュイン」というタンパク質をコードする遺伝子(sirまたはSIRT)が同定されました。さらに、これらの動物を対象とし、遺伝子組み換えによってサーチュインを多量に発現させると、寿命が延びることが分かりました。サーチュイン遺伝子はヒトにも存在することから、カロリー制限によってこの遺伝子の発現を高めれば長生きできると期待され、「長寿遺伝子」と呼ばれるようになりました。サーチュインのはたらきサーチュインが寿命を延ばす仕組みとして、その「脱アセチル化酵素」(デアセチラーゼ)としてのはたらきが重要と考えられています。細胞108カロリー制限は長寿につながるか?